目黒シネマで『ちはやふる-上の句-』『ちはやふる-下の句-』(2016年、監督・脚本:小泉徳宏)を見てきました。出入り自由な名画座ですが、今回のプログラムは二部作なので観客が「下の句」終了時にほぼ総入れ替えになる珍しい風景が見られました。
この映画は末次由紀の人気少女コミックの実写化作品。主演は広瀬すず。コミックは未読だが、アニメは見ていているという程度の予備知識ででかけました。
ちはやふる-上の句-
「競技かるた」というレアなスポーツ(?)を題材にした青春ドラマです。部員を集めてカルタ部をつくって力を合わせて東京大会を勝ち上がっていく、よくある設定です。
陳腐な映画ならなかったのは、よく練られた脚本のおかげでしょう。小学校時代の尺が短かったり子役がコレジャナイ感がはやや不満がありましたが、二部作の前篇ながら、東京大会突破をクライマックスにして前篇だけ見ても満足できる構成になっているさすがです。
あと競技かるたがマイナーだったことも奏効したのかもしれません。ボクシングや野球などのメジャーなスポーツだと俳優たちのスキルがニセモノだとすぐにわかりますが、競技かるたでは、これが全国レベルなのかどうかさっぱりわかりません。素振りを見ても「お、おう」と、なんとなくスゴそうと思わせるところは感じましたが……。男女混合なのも面白いと思いました。
しかし映画最大の魅力はやはり主役の綾瀬千早を演じた広瀬すずでしょう。映画『海街diary』(2015年) のサッカーシーンを見たとき、身体能力が高いなあと思っていましたが、本作でもそれを感じました。カルタのシーンもそうですが、ただ走るシーンだけでも只者ではないなと思わせる何かがあります。
そうした意味ではアイドル映画として立派に成立しています。日本映画史に残る一本かもしれません。
ちはやふる-下の句-
「下の句」は「上の句」のダイジェストから始まるかと思いきや、その予想ははずれました。明るい青春映画だった「上の句」とは対照的に、「下の句」は登場人物の人間関係や内面をより深く描く映画になり、前篇とかなりトーンが違っていて驚きました。
しかし若手俳優の演技がその域に達していないののか、その演出は必ずしも成功したととは思えません。あと一歩というところでしょうか。その若手俳優のなかでひとり気を吐いていたのが、クイーンの若宮詩暢を演じていた松岡茉優です。凄まじい演技力とうべきか、周りが下手すぎなのか分かりませんが突出した存在感がありました。
「下の句」は松岡茉優の映画と言えるでしょう。異論は認めない。
続編があるらしい
「ちはやふる」は二部作と書きましたが、なんと「続編」の制作が決定したそうです。まあストーリー上も主役の綾瀬がクイーンにボロ負けして終わったのではなんとも中途半端。続きが見られるのはうれしい限りです。