新文芸坐の《スクリーンで観ておきたい珠玉の名編Vol.25》で映画『完全なるチェックメイト』(2014年、監督:エドワード・ズウィック)を鑑賞。変な邦題がついているが、原題は「Pawn Sacrifice」。偶然見た予告篇に惹かれて見に行ったがやや期待はずれだった。何かがちがう。
- 出版社/メーカー: ギャガ
- 発売日: 2016/07/02
- メディア: Blu-ray
この映画はアメリカ人チェスプレーヤーのボビー・フィッシャー(トビー・マグワイア)の伝記映画。主に子どもの頃にチェスの才能を開花させ、1972年にレイキャビックでソ連の世界チャンピオン、ボリス・スパスキー(リーヴ・シュレイバー)を破り、チャンピオンになるまでが描かれる。
純粋なチェスの試合としてチャンピオンと対局したかったフィッシャーの思惑とは裏腹に、世界王者決定戦のは次第に米ソの東西冷戦の代理戦争の色合いを強めていく。そうした背景とは別にフィッシャーの精神病は悪化していく。
やはりテーブルゲームの緊迫感を映画で表現するのは難しいのだろうか、フィッシャーの精神病と奇行ばかりが強調されて演出には辟易とした。しかもチャンピオンになったシーンも高揚感に乏しくあまりに地味すぎる。
Pawn Sacrifice Official Trailer #1 (2015) - Tobey Maguire, Liev Schreiber Movie HD
さらに失望したのは、チャンピオンになったところで実質的に映画が終りだったこと。その後のフィッシャーの波乱万丈の人生を描かないでどうするのか。ちなみにフィッシャーは事実上アメリカを追われ、アイスランドに亡命して人生を閉じる。むしろ後半の人生こそ描く価値があるし、映画としても面白いものができたはずだ。
映画の終盤にフィッシャー本人が記録映像として登場する。晩年に近い頃の映像だと思われるが、なかなか風格があっていい面構えをしている。これを見てしまうと、この映画で描かれているフィッシャーはどうしても作り物に思えてしまう。