退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『ションベン・ライダー』(1983) / 80年代の過激な青春冒険映画

シネマヴェーラ渋谷の《開館10周年記念特集II シネマヴェーラ渋谷と愉快な仲間たち》の【柄本佑セレクション】で映画『ションベン・ライダー』(1983年、監督:相米慎二)を鑑賞。大ヒットした『セーラー服と機関銃』(1981年)に続く相米監督の第三作。

ヤクザにさらわれた同級生デブナガ(鈴木吉和)を追って、横浜から名古屋、そして大阪へ。中学生3人組(河合美智子永瀬正敏坂上忍)の冒険の旅を描いたロードムービー河合美智子永瀬正敏のデビュー作でもある。

ファーストシーンから8分間の長回しで何かスゴいぞと思わせる。しかし長回しで知られる相米監督だが、あまりに長回しとロングショットを多用しているため、いい加減見ていると疲れてくる。思いついたことをやりたいだけやったのかしらん。

プロットは破綻していてダラダラした映画だが、不思議と青春映画としての疾走感が失われていないのはさすが。きっと後の作品のよい習作になっただろう。


ションベン・ライダー(予告編)

また去年見た斉藤由貴主演の映画『雪の断章 -情熱-』(1985年)でも役者に無茶やらせる監督だなと思ったが、本作でも少年少女3人を追い込んでいる。橋から飛び降りたり、車に乗り移ったりする体当たりの演技を強いていて、貯木場のシーンはかなり危ない。とくに河合美智子の運動神経がすごい。トロいやつなら死んでるよ。

今回もアクション俳優でもないのに無理すんなと思ったが、芸能界で3人が生き残っていることを見ると、この映画で役者根性が涵養されたというべきか。いまの3人にこの映画のことを聞いてみたいものだ。

本作は河合のアイドル映画の側面もあったのだろうが、途中で丸刈りにされてちょっとかわいそう。河合は本作で主題歌も歌っているがなかなか上手い。後にオーロラ輝子として紅白歌合戦出場(1997年)を果たすのは別の話だが器用な人だなと思ったものだ。

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