退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『聖獣学園』(1974) / 多岐川裕美の伝説のデビュー作

シネマヴェーラ渋谷の《鈴木則文復活祭》で映画『聖獣学園』(1974年、監督:鈴木則文)を鑑賞。多岐川裕美のデビュー作として知られる、修道院を舞台にしたエロティック・バイオレンス映画。東映ポルノの代表作のひとつ。

この映画は多岐川裕美が脱いでいる唯一の映画として一部のファンに知られているが、B級映画としてもなかなか面白い。カルト映画に欠かせない要素が詰まっていて、鈴木則文監督の手腕を感じさせる。ちなみに多岐川裕美の芸名は、この映画で演じたヒロインの役名・多岐川魔矢に由来する。

修道女だった母の死の真相を知るために、娘・多岐川魔矢(多岐川裕美)が自ら修道女となり、母のいた修道院に入り込むというストーリー。俗世間から隔離された修道院でリンチ、レズ、レイプなどの背信行為が繰り広げられる。当然、多岐川も手ひどく拷問され、棘のある鞭で打ち据えられるシーンは、この映画最大の見どころになっている

さらに長崎原爆で被爆した司祭(渡辺文雄)登場し、「あの惨禍にあっても神は現われなかった」などというあたりは、「遠藤周作ですか!?」とツッコミたくなる。本作はいろいろ宗教的にヤバイと思うのだが、当時カトリックから抗議を受けなかったのだろうかか。

なかなか魅力的な映画だが、当時興行的にはさっぱりだったらしい。その後、多岐川は活躍の場をテレビに移し清純派として人気を博すことになるが、彼女がデビュー作で脱いでいることが知られると、東映はちゃっかりリバイバル上映を行いガッポリ稼いだとのこと。「清純派が脱ぐ」というのは大衆を惹きつける不変のテーマのようだ。

現在の多岐川さんがこの映画をどのように思っているかは知るすべもないが、魔矢役の多岐川裕美の美貌がフィルムに記録され、公開から40年以上経ったいま渋谷の大きなスクリーンで楽しめるのは悪くない。

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ちなみに今回の《鈴木則文復活祭》のポスターには、"THE RESURRECTION OF SOKUBUN"というタイトルとともに、この映画から多岐川裕美が配されてる。粋な演出というべきか。

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