Huluで映画『宇宙兄弟』(2012年、監督:森義隆)を鑑賞。小山宙哉原作のコミックの実写化作品。六太を小栗旬が、日々人を岡田将生がぞれぞれ演じている。
長編コミックを2時間の映画にまとめるの無理があるし、しかも原作は連載中で完結していないことを考え合わせると実写化は困難である。それでも一本の映画を撮らなければいけない大人の事情が透けて見える。
こうした事例は数多く見出すことができる。最近見た映画では、大根仁監督の『バクマン。』(2015年)が挙げられる。しかしこの作品は『宇宙兄弟』とは対照的に原作からの取捨選択が成功した例と言える。
この映画の致命的にダメなところは、原作にあるシャロン博士の件が省かれているため南波兄弟の月への動機が希薄に思えること。そのため宇宙への情熱がまったく伝わってこない。
さらに映画終盤での駆け足もかなり酷いし、極めつけは兄弟が月面に立つというラストだ。原作が完結していないにもかかわらず、あのラストはあり得ないだろう。映画と原作は別物と言われても納得できるものではない。
いろいろイケてない映画なのだが、あえて映画で気に入ったところを探してみたい。ひとつ挙げてみると、六太の受けた宇宙飛行士選抜のヤマ場である閉鎖空間の試験のシーンである。
六太のほかに共同生活を過ごすメンバーを演じる俳優は麻生久美子、濱田岳、新井浩文、井上芳雄、塩見三省。このアンサンブルはキャストが豪華であるだけでなく原作のイメージを捉えていて評価できる。ここをもう少し膨らませてほしかった。意外な配役だったのはミュージカル出身の井上芳雄が真壁ケンジ役だったこと。このメンツでカラオケに行くシーンがあればよかったのと夢想してみる。
原作やアニメに親しんでいる人にはかなり不満が残る実写化映画だと思われるが、原作が完結した後に新たな実写化に挑戦する猛者が現れれることを期待したい。
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