シネマヴェーラ渋谷の《カンヌ凱旋 黒沢清レトロスペクティブ》という企画でホラー映画『回路』(2001年)を鑑賞。海外での評価も高くアメリカでリメイク版『パルス』(2006年)が制作されたことでも知られる監督の出世作。併映の『神田川淫乱戦争』(1983年)が目当てだったので期待しないで見る。
大学生・川島亮介(加藤晴彦)のパソコンが、ウラウスというプロバイダーを通して「幽霊に会いたいですか」と問いかける謎のサイトに接続されてしまう。それ以来、亮介の周辺には奇妙な事件が次々に起きて、ひとりまたひとり黒い影を残して消えていく。
次第に変容していく世界。そして好意を寄せる春江(小雪)も予期せぬ行動をとりはじめる。世界が崩壊していくなか、亮介はミチ(麻生久美子)と出会い微かな希望に向かい逃避するため船出する。ネットを通じて伝搬していく恐怖と孤独を描いたホラー映画。
いままで持っていたホラー映画のイメージがちがうが黒沢作品のテイストがよくでいる。不条理なSFという趣きの映画だがこれはホラーなのだろうか。まあジャンルなんてどうでもいいが。
出演者について言えば、麻生久美子と小雪が出ていてさすがに若いが、あまり垢抜けておらず目立たない。ヒロインが絶叫するようなホラー映画ではないので女優の存在は地味である。
それでも二人のノースリーブ姿が楽しめる。当時から小雪のスタイルがよいことは確認できる。まあノースリーブといっても映画からは夏の季節感はまったく伝わってこないのは不思議な感じだ。
CDを使ってダイヤルアップ接続でネット接続するなど、インターネット周辺の事情はさすがに時代を感じさせる。当時の時代背景を斟酌して映画を見なければならないほど時代の流れははやい。
また東京の街並みや各種小道具にも、もはやノスタルジーを感じることができる。映画の本筋以外にそのあたりも楽しめるだろう。