退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『CASSHERN』(2004) / テレビアニメ『新造人間キャシャーン』の実写化作品だけど…

DVDで映画『CASSHERN』(2004年、監督:紀里谷和明)を鑑賞。「たった一つの命を捨てて、生まれ変わった不死身の体。キャシャーンがやらねば、誰がやる!」というキャッチで人気を博した、タツノコプロによるテレビアニメ『新造人間キャシャーン』を原作とする実写映画。映像作家・紀里谷和明の商業映画監督デビュー作品であり、主題歌「誰かの願いが叶うころ」を妻(当時)の宇多田ヒカルが担当して話題になった。

全世界を破滅的状況に変えた五十年戦争を経て、大亜細亜連邦はヨーロッパ連合を蹂躙していた。しかも空も海も地も毒素に汚染され、人々は絶望に打ちひしがれていた。そうしたなか妻ミドリ(樋口可南子)を病に冒された生物学の権威・東教授(寺尾聰)は、驚異的な復元能力を誇る「新造細胞」を生み出し、軍部に取り入ることに成功する。そして戦死した戦死した教授の一子・鉄也(伊勢谷友介)が生まれ変わり「新造人間」が誕生する……。


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PVで名声を得た紀里谷監督らしく局所的に引き込まれる映像はいくつもある。しかし映画全体としては冗長に感じたし、いろいろアイデアを盛り込みすぎるだけでなく、捨てることも必要だろうと痛感させられる。映画の文法を無視した箇所も多い。

全編に流れる無国籍な世界観は嫌いではないが、やはりタツノコプロのアニメをそのまま映像化してほしかった。「新造細胞」などという新しい設定を導入したために、いろいろなところで破綻が生じている。また上月ルナ(麻生久美子)が戦わないのが気に入らない。MF銃を武器にしてアンドロ軍団と戦ってくれないと……。個人的にはロングヘアーの麻生久美子が活躍するだけで大幅加点したい。

出演者は、唐沢寿明寺尾聰宮迫博之西島秀俊及川光博大滝秀治と豪華で、ギャラ分はかっちり仕事をしている。さすがプロ。映画がアレなだけに彼らの好演が虚しい。

ラスト近くで「希望」というワードが飛び出して苦笑した。先日、映画『大怪獣のあとしまつ』を見たからだ。見た人にしかわからないだろうが、安直に「希望」とかいう言葉を使わないほうがいいね。

この映画に対する世間の評価は著しく低いらしい。それでも興行的には結果を出したおかげなのか、紀里谷監督には、映画『GOEMON』(2009年)で劇場映画に再挑戦する機会が巡ってくる。日本映画業界も捨てたものではない。

この映画で、監督がどこに行っても「宇多田ヒカルの夫」と呼ばれる悩みを解消できたのかわからないが、私は最新のCG技術を駆使した新作を見てみたい。