退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

岡田斗司夫 FREEex『僕たちは就職しなくてもいいのかもしれない』(2014年、PHP新書)

評価経済社会」の到来を予言した岡田斗司夫が、これからの新しい働き方を提案する本。「働かなくてもいい」ということではなく、今後の社会はいままでのように企業に就職するのは合理的ではないといい、「仕事サーファー」「愛されニート」になることを提唱する。徹底的に利他的になることでキビシイ社会をサバイバルすることを説く。

僕たちは就職しなくてもいいのかもしれない (PHP新書)

僕たちは就職しなくてもいいのかもしれない (PHP新書)

IT技術の進歩が雇用を奪っている事例を見ながら、企業の雇用意欲が衰えている理由を分析する。まあ、どこかで聞いたことのある話ではあるが、なるほどと思わないでもない。

しかし、だからと言って若者がこぞって「仕事サーファー」「愛されニート」を目指したら日本はどうなるのだろう。こうした「仕事」は経済的基盤がある程度しっかりしていて、パトロンになるような人がいてはじめて成立するものだろう。パラサイトすることが前提だ。

この本は、就活に不安になっている学生に対して、結果を出せないことについての自己弁護のための理論武装を提供し、いっときの安らぎを与えるという、ある意味危険な本であり、内容に下手に説得力があるのでたちが悪い。

大学の就職支援センターなどで、この本で専門家の反論を加えながら読んでみるというセミナーをやるとかもしれない。いまどきの学生のどのくらいがこの本に賛同するのはわからないが、むしろ、この本を読んで「やっぱり就職しなくては」と強く思う学生も多いではないか。

たしかに、仕事=就職ではないだろうし、将来、会社を離れて生計を立てることになるかもしれない。しかし、まずはきちんと就職するところからキャリアを始めることを勧めたい。それが難しいっていう声もあろうが、だから言ってこの本を真に受けるのはあまりに危うい。