新文芸坐で映画『蜩ノ記』(2014年、監督:小泉堯史)を鑑賞。葉室麟の直木賞受賞作である同名時代小説の映画化で、役所広司と岡田准一の初共演作である。
好きな映画である『雨あがる』(2000年)の小泉堯史監督の作品だったので公開時に見に行くか迷ったが、「10年後の切腹」というのが引っかかり結局見送った。どんな話かさっぱりわからないのだ。今回初めて見たが、爽快感はないが落ち着いた時代劇で安心して見ることができた。
城内で刃傷沙汰を起こした岡田准一は、7年前に藩主の側室と不義密通の罪で10年後に切腹を命じられた役所広司の監視を命じられる。切腹までの間、寝食を共にするなかで次第に役所に心酔していく岡田。やがて岡田は7年前の事件に疑念を抱くようになり、事件のウラを探っていき重大な事実に行き当たる。
岡田准一はこの映画に向けて居合の修練を積んだとのこと。見事な居合の型を披露している。武術マニアの面目躍如というところか。この映画は殺陣のシーンは少ないが、7年前の側室襲撃事件で役所広司が、暗がりのなか側室とその子の暗殺を図る襲撃者たちを瞬く間に斬り伏せるシーンは圧巻。これを見るだけでも、この映画を見る価値があるだろう。
全体としては静かな映画で、岡田と役所の家族との心暖まる交流が印象的だ。終盤には、事件の真相がわかり役所が無実であることが明らかになり、息子が元服し、さらに岡田と役所の一人娘(堀北真希)との婚礼があり、ハッピーエンドかと思いきや、やはり当初決められたとおり役所は切腹することになる。この理由を外国人に説明するのは難しいだろうし、現代の日本人の多くも納得できないだろう。さまざまな思いが残る余韻の残すエンディングだった。
映画 「蜩ノ記」 特報 役所広司、岡田准一、堀北真希、原田美枝子 - YouTube
年末年始、テレビでいくつか時代劇ドラマを見る機会があったが、最近撮られたものはショボイ合成でがっかりするものが多い。しかし本作はさすがに映像が美しく、日本の四季の移り変わりを見事に捉えているのには感心させられた。