退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】中島義道『東大助手物語』(新潮社、2014年)

哲学者・中島義道先生の東大助手時代の体験記。学問的に尊敬できない糟谷教授(仮名であろう)にイビられる日々を描く。

東大助手物語

東大助手物語

いまなら立派なアカハラだろうが、当時は表沙汰にならない雰囲気があったのだろう。外部からは決して見えない大学教員のヒエラルキーや教員人事の内幕をうかがい知ることできて興味深い。

学内での教授のいじめも執拗だが、教授夫人と中島先生の奥さんがまたすごい。教授夫人が海外旅行の留守中に中島夫妻に自宅の庭の芝刈りを強要したり、奥さんは旦那の就職を世話してもらったお礼に教授に金を払おうとしたりする。いやはや乱れてますね。

トンデモない教授に見えるが、ウィーン帰りの37歳の中島先生を助手として引き上げて、最後は新設大学とはいえ就職を世話してくれるのだから世の中わからないものだ。

終盤、就職のお礼のことでトラブルになるが、とうとう学科長にすべてを打ち明けて事無を得る。帰国した教授が中島先生を怒り狂って学内を探しまわるのが面白い。3月までまだ助手の任期があったのにどうしたのだろう。

ついには帝京技術科学大学(大学の格として大いに不満だったろうが)の助教授としてアカポスを得るに至る。めでたしめでたし。

表紙が安田講堂なのはやっつけ仕事だったのか、写真を使うなら本書の舞台である駒場のものがよいだろう。