退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】『高学歴女子の貧困』 / あなたは共感できますか?

本書は、3人の「高学歴女子」(ネット用語では女子ではなくBBAかも……)が自らの境遇と客観的なデータをもとに現実をあぶり出す、という本です。帯には「女は女というだけで貧乏になる――見えにくい実態を明らかに。」とあります。

3人の境遇はさまざまですが、どうも全体的に投げやりなうえに愚痴っぽくて共感を得られにくいのと思うのです。自ら招いた災禍というとキビシイかもしれませんが、人文系の博士課程を目指すキャリアパスがきびしいのはすぐに分かるはず。まあ、頭のよい人たちですから分かったうえでの進路選択だったのでしょうが……。

3人のなかに学部を卒業した後、せっかく就職したのに退職して大学院に入り直した揚げ句に生活に困窮するという人がいましたが、「は?」という感じです。まったく同情できない身勝手な行動だと思われても仕方がない。そのため重要な論点を含んでいるのに、世間からは「自業自得」「世間知らずのあまちゃん」などと言われて議論が終了になるおそれがあります。惜しい。

重要な論点として挙げられるのは、大学の非常勤教員と常勤教員との待遇の格差が大きいこと、そして人文系大学院の定員が過剰であることです。とくに後者は、社会のリソースを注ぎ込んで専門家を育成しているのに相応しいポストに付けずに、成果を社会に還元できない。納税者として看過できない、社会にとって大きな損失です。かと言って、大学院の定員を減らすと専門家のポストも減るという悪循環……。

人文系でアカデミアでポストを得るのは難しい。それは特別に女子だからというわけでもない気もします。女性であることと、高学歴であることをきちんと分けて議論したほうが分かりやすいのかもしれません。

さらに「低学歴女子の貧困」の問題はもっと深刻ではないかという問題提起もあります。もっとも、そちらをフォーカスすると重くなりすぎて軽い読み物としてつまらなくなってしまうかも。さてどうしたものか。