新文芸坐で映画『舞妓はレディー』(2014年、監督・脚本:周防正行)を鑑賞する。地方出身の少女(上白石萌音)が、京都の花街で舞妓を目指す成長譚。これを歌とダンスを挟みながら進行するミュージカル映画に仕立てている。
タイトルはオードリー・ヘップバーン主演の映画『マイ・フェア・レディ』のもじりだろうが、内容でも言語学者(長谷川博己)がヒロインの強い方言を矯正するなどの引用がある。
監督は、このアイディアを『シコふんじゃった。』(1992年) の頃から温めていたらしい。この構想でもって周防監督が撮れば、自ずと一定の水準の映画が約束されるだろう。その期待を裏切らない作品である。
まずヒロインの上白石萌音がすばらしい。世の中には原石はあるんだなと思わせる。そして、周防監督の常連の渡辺えりや竹中直人も相変わらず楽しいし、監督のパートナーの草刈民代もハッスルしている。まあ奥さんを出さないと気が済まないのかと思わなくもないが。また個人的には先輩の舞妓役の田畑智子の出番が多いのがうれしい。
ラストは花街のセットで舞妓となったヒロインが歌うなか、出演者総出で大団円。ミュージカル好きには楽しいひと時でした。
ただし今回は『蜩ノ記』との併映だったこともあり、この映画がミュージカルとわかったとたんに席を立つ人が結構いたのには驚いた。時代劇とミュージカルとの食い合せはよくなかったようだ。日本のミュージカル映画の夜明けは遠い。