映画『羊と鋼の森』(2015年、監督:橋本光二郎)を鑑賞。原作は宮下奈都の同盟小説。主演は山﨑賢人。
主人公・外村(山崎賢人)は高校生のとき、調律師が学校のグランドピアノを調律する場面に偶然出会う。それがきっかけで調律師になることを決意した外村は、初めて北海道を出て東京の調律師養成の学校に通い、卒業後、北海道の楽器店に就職する。先輩たちの指導を受けながら調律師としてのキャリアを歩み始める……。
映画の手柄ではないが、「羊と鋼の森」というタイトルはキャッチーで上手い。不思議なタイトルだなと思って見始めたが「なるほど」と唸ってしまう。またピアノの調律師という馴染みのない仕事について奥深さが感じられるのもよい。
しかし映画としては冗長で途中で飽きてくる。いくつかのエピソードを連ねていくのはいいが、単調でワクワクすることがない。もう少し工夫できたのではないか。
とくにダメだと思ったのは、主演・山崎賢人のモノローグで始まる冒頭である。朴訥とした主人公の演じているのだろうが出落ちとしか思えない。登場人物が出ない段階でモノローグで演技するのは難しいと思うが、この出だしで映画はずいぶん損している。
あえて美点を見つけるとすれば、上白石萌音・萌歌の姉妹の共演である。映画初共演とのことだが、姉妹の連弾シーンがとてもいいし、ピアノの才能をめぐる姉妹間の葛藤もよく描けている。上白石姉妹にとっても思い出の映画となったにちがいない。
まあ映画としてはあまり成功しているとは思えないが、主役をピアノだと思うと苦にならない。ヘッドホンでじっくりとピアノの音を味わいながら見るとよいだろう。