退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『天使のはらわた 赤い教室』(1979) / 曽根中生の代表作にして、日活ロマンポルノ屈指のメロドラマ

シネマヴェーラ渋谷で、『天使のはらわた 赤い教室』(1979年)を鑑賞。今年の8月に死去した曽根中生監督の追悼企画《追悼!曾根中生》のなかの一本。

天使のはらわた 赤い教室 [DVD]

天使のはらわた 赤い教室 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 日活
  • 発売日: 2007/06/22
  • メディア: DVD

日活ロマンポルノを長く支えた曽根監督の代表作であるだけでなく、名美役の水原ゆう紀、村木役の蟹江敬三にとっても重要な作品であろう。本作は原作者の石井隆が共同で脚本も手がけている。その後、様々な俳優により「天使のはらわた」シリーズが繰り返しつくられているのは周知のとおり。本作はシリーズ第2作。

脈絡のない濡れ場が多々あるのは作品の性格から仕方ないが、基本は「男女のすれ違い」を描いたメロドラマ。主演の水原ゆう紀は、教育実習生時代に不良生徒たちから輪姦されたことをきっかけに転落していく女を好演している。宝塚歌劇団出身で清純派として活躍していた彼女が、既存のイメージをかなぐり捨てた演技が秀逸。とくに表情がすばらしい。

玉石混交の日活ロマンポルノの作品のなかで屈指の一本としておすすめできる映画であり、今回の特集上映でも必見の一本だろう。
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ちなみに併映作は『赤い暴行』(1980年)だった。売れない4人組のロックバンド(実在のバンド「デビル」)を巡る青春群像を描く作品。ロビーのポスターには「ビートをきかせてセクシーロック」というコピーが踊っていた。

2本とも娯楽性をどこか遠くに置いてきた、シネフィルっぽく言えば「シネマ・ヴェリテ(真実の映画)」というべき作品だった。そうした作品を撮った曽根監督が娯楽映画の極致であるロマンポルノの一翼を担い、その終焉を見送ったというのは皮肉なものだ。撮りたい映画に相応しい活躍の場は他になかったのだろうか。

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