退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『緋牡丹博徒 一宿一飯』(1968) / シリーズ第2作

新文芸坐で開催中の《追悼上映 鬼才 鈴木則文 ~下品こそ、この世の花~》で、映画『緋牡丹博徒 一宿一飯』(1968年)を見た。鈴木則文は、藤純子主演の「緋牡丹博徒」シリーズのほとんどの作品で脚本に関わっていて、この第2作では監督も担当している。

緋牡丹博徒 一宿一飯 [DVD]

緋牡丹博徒 一宿一飯 [DVD]

  • 出版社/メーカー: TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
  • 発売日: 2014/03/14
  • メディア: DVD

鈴木則文の初期の監督作品であるが、若山富三郎のキャラクターや玉川良一山城新伍の道化コンビに監督のバカバカしい色がよく出ていて面白い。シリーズの性格上、さすがにお色気は希薄。

後半は伝統的な東映任侠で、敵役の悪行の業を煮やして鶴田浩二とともに悪党のアジトに殴りこみというパターンである。殴りこみではまったくピンチにならずに楽勝してしまうところがちょっと物足りない。それに、いったん鶴田浩二が出ると全部持っていくほどの存在感がすごい。誰が主役だったかなと。

雑誌「キネマ旬報」(2014年7月下旬号)の鈴木則文追悼記事に、富司純子(シリーズ当時は藤純子)が追悼文を寄せていて、本作のスチルが大きく掲載されている。そのなかに、藤純子は映画でもろ肌を見せるのに抵抗があり、監督に片肌にしてもらったというエピソードが披露されている。まあ、刺青を見せるシーンがないと映画が成り立たないわけだが……。

キネマ旬報 2014年7月下旬号 No.1666

キネマ旬報 2014年7月下旬号 No.1666

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: キネマ旬報社
  • 発売日: 2014/07/05
  • メディア: 雑誌

本作で緋牡丹を見せるのは、悪党に見得を切る場面ではなく、自殺をしようとする女の子に刺青を見せて「肌に墨は打てても心には誰も墨を打つことはできんとよ」と諭すという、なかなか味のあるシーンになっている。名場面である。

f:id:goldensnail:20140723170749j:plain