本書は、本来、大学選びをする人向けの進路案内であるが、それ以外の人にとっても読み物として面白い。
従来の大学案内では地域別に各大学の紹介が羅列してあり、申し訳程度に大手予備校の偏差値一覧が載っている場合が多いが、本書は就きたい仕事のジャンルごとに章立てされている点がユニークである。
各章は職業ジャンルごとに、次の内容で構成されてる。
- 業界の基礎データ
- よくある相談、どっちがお得?
- 大学受験のモデルパターン(併願パターン)
- 一口情報(大学ごとのミニ情報と筆者からひところ)
- 触れておきたい書籍
- 高校生の素朴なQ&A
- この業界の主な企業・職業・資格
このなかの「よくある相談、どっちがお得?」は、大学はコスパじゃないだろとも思うが、実社会には損得があることがわかる。大学の偏差値や知名度だけでは決まらない要素があり、それは学校の先生にはわからないことも多いようだ。高校の進路相談室に常備しておいてほしい本である。しかし、高3になって現実を突きつけれても遅すぎるいう場合もあるかもしれないが……。
また意外と役に立つのは「触れておきたい書籍」という高校生向けの読書ガイドである。コミックを始め、読みやすそうな本が揃っていて、思いがけない本が見つかるかもしれない。
そして進路が決まらない人に向けて、「なりたい職業がわからない(進路未定)」という章が設けられるいる点もいい。理系だと進学先が将来の職業と直結する場合も多いので、受験時に一定の方向性を決めておくことが重要であろう。
受験生ならずとも社会人がこの本を手にとっても、自分の関係している業界以外は意外と知らないことが多いことに気がつくだろう。パラパラとページをめくっているだけで社会勉強になる。
しかし、それにしても「一口情報」に載っている大学が多すぎる。日本にこんなに大学が必要なのかという気分になるのもまた事実である。そろそろ整理したほうがいいかもね。