舛添要一都知事がぜんそく医療費全額助成の継続に消極的な考えであることを記者会見で表明した。この会見をテレビで観て、「ああ、舛添始まったか」と思ったと同時に、石原都政下で助成制度が創設されたとき、「都知事がリードすればかなりのことができるんだな」と思った記憶があったので、今回、その縮小を残念に感じた。
ぜんそく医療費助成制度とは
発端は東京大気汚染訴訟である。この訴訟では、ぜんそく患者らが、自動車の排ガスで健康被害を受けたとして、都や国、首都高速道路会社と自動車メーカー7社に損害賠償などを求めた。2002年10月の一審判決は都と国、首都高会社の責任を認めたが、都だけ控訴せず、2007年8月、二審で医療費助成制度を柱とした和解が、控訴した国やメーカーを含め成立した。
この東京大気汚染訴訟の和解を受け、患者の医療費全額を国と都、自動車メーカーなどがほぼ三分の一ずつ負担する。都などが拠出した計200億円を基金として2008年から始まり、和解条項では5年後に見直しを検討することになっていた。
ディーゼル車排ガス規制に取り組んだ当時の石原慎太郎都知事が制度創設もリードしたとされる。石原都政の評価は様々であろうが、都知事が主導権を発揮すれば相当のことができることを示した助成制度創設であった。
事業規模と問題点は
ではどのくらい認定患者がいるのだろうか。東京新聞の記事によれば、「都内に一年以上住む十八歳以上の気管支ぜんそく患者。七万七千人が認定されている」とある。財源は基金が200億円を5年間で使い切るというから、年40億円程度ということになる。77,000人で40億円/年という数字は覚えておきたい。
都は、財源が底をつく見込みの2015年度末で新規患者の受け付けを打ち切る方針であり、全額助成は2018年度末まで都の負担で続けるが、その後は三分の一の助成に減らす見込みとされる。つまり、これまで国とメーカーが負担していた分は患者の負担になる。
訴訟のなかでも自動車メーカーや国は大気汚染とぜんそくの因果関係を認めていなかった経緯があり、財源の再負担には応じていない。そもそも長期的に維持できる制度ではなかったということだ。長期的なケアが必要とされるぜんそくに対して、助成制度の設計が適切だったのかという疑問はある。
舛添都知事の対応は
都知事は会見のなかで、「タックスペイヤーの都民を、納得させることができるのか」「制度創設から五年後の見直しは、和解条項に入っている。見直しは当然」と全額助成制度の継続に消極的な姿勢を示した。会見の流れのなかの発言してもずいぶん冷淡な印象を受ける。
しかも、患者団体が求めている知事との面会についても「今のところ、事務局レベルでしっかり対応している」と、面会の意向がないことを明らかにしている。
せめて患者たちに会って、国とメーカーと交渉した経緯、大気汚染は改善していること、そして今後の都の厚生行政の方向性などを示して納得してもらう努力をする程度の誠意はあってもいいのではないか。選挙中から予想できたことではあるが、どうも新都知事には人情味が感じられない。