先日、六本木・国立新美術館で開催中の「THE ハプスブルク」に行ってきた。ウィーン美術史美術館(オーストリア)とブダペスト国立西洋美術館(ハンガリー)の所蔵品のなかから、ハプスブルク家に関連する所蔵品を展覧する美術展。
600年にわたりヨーロッパに君臨した名門に相応しく、歴代の皇帝による芸術保護の成果として、質の高いコレクションを形成している。この展示会でも名だたる巨匠たちの作品が集結していて見ごたえがある。しかし、一室を占拠して展示されるような、いわゆる「目玉」の作品はないので、ややインパクトには欠ける。
中野京子『名画で読み解く ハプスブルク家12の物語』を読んで予習して出かけたせいもあるが、興味を惹いたのは王家の肖像画のコーナー。宮廷肖像画は、この名門一族をテーマに揚げる本美術展によく合っている。このコーナーをもっと掘り下げた企画にすればいいのにと感じた。
肖像画のなかには、上記2館の所蔵品ではないが、フランツ・クサーヴァー・ヴィンターハルター『エリザベート皇后』(画像)も特別展示されており、人々の注目を集めていた。絵としては面白みに欠けるが、宝塚などのミュージカルで広く知られている絵画であり、実物を鑑賞できたのはよかった。この絵画のなかの衣装は、舞台で再現されているもので、ひいきの女優をイメージする人も多いだろう。
また皇帝が実際に着用した甲冑の展示があり、絵画中心の展覧会のなかでアクセントになっていた。当時の貴族の趣向が窺えて興味深い。
今回の美術展は、「THE ハプスブルク」という俗な名称がついている。この命名センスはどうかと思うが、ここまで大仰にいくなら、いっそのことスペインのプラド美術館あたりからも、ハプスブルク家ゆかりの所蔵品を借りてきて、同時に展示してほしかった。それでこそ「THE ハプスブルク」だろう。
まあ場内の混雑に閉口したが、シシィに会えただけでもよかったとしよう。