先週、新宿バルト9で「沓掛時次郎 遊侠一匹」(1966年、加藤泰)を観た。「東映時代劇まつり」という企画の一本。任侠モノは、これまで敬遠していて、それほど見てないのだ。だが本作は名作の誉れ高いこともあり、食わず嫌いもよくないと思い見にいってきた。
- 出版社/メーカー: 東映ビデオ
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序盤は、沓掛時次郎(萬屋錦之助)と渥美清との道中から始まりなかなか贅沢だ。そのまま物語が進んでいくかと思うと、単身で敵役に乗り込んだ渥美清があっさり惨殺されて、ストーリーがいったん途切れる。もっと渥美清の喜劇性をもっと見ていたかったので、なにか惜しい気がした。その後、池内淳子が登場して本筋の人情噺が始まる。
ヒロインの病気や子役といったお膳立てが多少あざとい気もするが、とにかく名場面の連続で見ごたえがある。とくに構図や小道具といった映像面での演出の非凡さが際立つ。錦之助が演じる時次郎は超人的に強いのだが、それと同時に任侠の虚無感が映画のテーマとして鮮明に描かれている。日本映画の黄金期を象徴する名画といえる。
ちなみに沓掛(くつかけ)というのは、時次郎の故郷である長野県の地名であるらしい。どのあたりなのだろう。