- 作者: 神保哲生
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2009/07/03
- メディア: 単行本
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積読してあったが、そろそろ読まないと選挙に間に合わないかと思って手に取る。少し前まで、宮台真司『日本の難点』を読んでいて頭が痛くなっていたところだが、この本は論旨が明快で読みやすく比較的短時間で通読できた。
巷ではいよいよ選挙戦が佳境に入り、各党のマニフェストを比較する試みをよく見かける。しかし、マニフェストは様々な「政策」の羅列かに過ぎず、その党がどのような国を目指しているのかまではわからない。さらに論争の種になる政策を、あえてマニフェストから外すといったことが平気で行われているので、ますます政党の正体が分かりにくなっている。
本書では、民主党の政策資料、過去のマニフェスト、提出法案、主要議員の発言などを、筆者が分析し、99項目にわたり網羅的に解説を加えている。政権交代が行われると何が起こるのかを示し、そして読者は本当にそれを望むのかを問われる。まさに選挙を前にしてタイムリーな良書である。なお、本書では民主党を一方的にヨイショしているわけでもないことも強調しておきたい。
時間がない人は、「序章」だけでも目を通すといいだろう。そのなかで、民主党の政策の根底にある理念は「オープン・アンド・フェアネス」であり、さらに以下の5つのキーワードがそれを支えているとする。
- 情報公開
- 公平・公正と機会均等
- 安心・安全
- 地方分権
- 包摂と参加
細かい内容について本書を参照してほしいが、理念としては強い感銘を受ける内容もあった。しかしながら、先日の党首討論などでは、こうした理念がまったく伝わってこないと感じるのは私だけだろうか。それは単に討論技術の問題なのか、それともこうした理念が民主党のDNAではないのかまではわからない。
あと通読後に感じたのは、民主党の政策は、やはり「安全保障」「経済政策」が弱いということだ。安全保障については、差し迫った危険がないから急を要することはないという向きもあるが、本当に大丈夫なのか不安である。気づいたときには、「時既に遅し」ということにならなければよいのだが。