DVDで「レイジング・ブル」(1980年、マーティン・スコセッシ)を見る。40年代から50年代に活躍した実在のプロボクシングのチャンピオンであるジェイク・ラモッタの半生を描く。
- 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
- 発売日: 2008/11/28
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冒頭シーンの美しさに見とれているうちに、モノクロ画面で構成された作品であることに気づく。モノクロなのが、ボクシングでの流血シーンの凄惨さを緩和するための演出かはわからないが、全編が引き締まった効果はみてとれる。全体に劇画調で過剰演出という気もしなくもないが、パワフルなのはたしかだ。
ボクシングに限らずにスポーツ映画では、俳優がスポーツをするシーンで、どうしても素人に見えて興醒めすることが多い。ボクシング好きの知人は試合シーンにリアリティがないとダメ出ししていたが、この映画のロバート・デ・ニーロはそれほど悪くないと思う。体も作ってきているし、かなりトレーニングを積んで臨んだにちがいない。
この映画のデ・ニーロといえば、前半の精悍な現役時代と、後半の引退後のハゲの肥満体との対比が、鬼気迫る役作りとして取り上げられることが多い。確かにすごいし映画史上にも残るだろうが、やり過ぎではないかとちょっと引いてしまうところも正直ある。
この主人公はボクシングには秀でていたが、それ以外はろくでなしといっていいほど、バカでDV連発、そのうえナルシストというダメ男。まったく共感できない。それでも拘置所で “Why? Why? Why?”と壁を打ち続けると場面は泣ける。不器用にしか生きられないのだろう。周囲の人は迷惑だろうが。
そんなこと言っていると、なんの取り柄もないダメ男のアンタは何なの、と言われそうだが――。