「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った? ~世界一わかりやすい経済の本~ (扶桑社新書)
- 作者: 細野真宏
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2009/02/27
- メディア: 新書
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評判どおり分かりやすく、論理も明快でかつ読みやすい。新書で2段組は珍しいレイアウトや、イラストが豊富に採用しているなど、構成もよく考えられていている。
本書では米国発の経済危機についても言及しているが、やはり目玉は公的年金の解説であろう。「税方式への移行」を唱える日経新聞の主張を論破するあたりは痛快ですらある。国民年金は義務ではなく、国民の権利であるとする筆者の主張には説得力がある。ネットでは、年金は破綻するから払わないという人がいるが、ぜひ本書を読むことを勧めたい。
さらにコラム(p.175)で「年金」と「生活保護制度」の関係についての問題点を指摘して、改善案を示しているのにも注目したい。つまり、現状の制度だと、極端なことを言えば、生活保護になった場合には、キチンと年金を払ったり、免除申請をしたりした人も、そうでない人も「結果は同じ」となる場合があるいう問題を指摘している。まじめに年金を払っている人が報われるように、生活保護費に年金分を上乗せされるなど、制度を調整していく必要があるとしている。
この「年金を払っても払わなくても結果は同じ」という言説は、ネットでもよく目にする。結果として払わないことにインセンティブが働くような制度は、確かに問題があるだろう。それでも払わない人が増えても、年金制度が破綻することがないことも、この本の説くところであることに留意してほしい。
ただ厳密には「生活保護費の増大が財政に与える負担」「年金運用成績が極端に悪化した場合の影響」などは、もう少し精緻な議論が必要だとも思うが、年金制度は考える契機、さらには物事を論理的に考えることの大切さを学ぶには良書である。