シネマヴェーラ渋谷で「煙突の見える場所」(1953年, 五所平之助)を鑑賞。脚本家・小国英雄の特集企画。
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舞台は戦争の傷跡がまだ色濃く残る東京の下町(北千住あたりらしい)。上原謙と田中絹代の夫婦と、その家の二階に間借りする芥川比呂志と高峰秀子の4人が、紡ぎだす人情噺。日常を描いているのでダイナミズムは乏しいが、しみじみとできる秀作といえる。
そのなかで、芥川×高峰の若いカップルのやりとりがいい。「仙子さんに気をとられず勉強に専念すべし」という張り紙を、本人に見つけられるあたりは、いまの萌えにも通じるものがあるのではないか。
タイトルの「煙突」は、「おばけ煙突」として親しまれた千住火力発電所の煙突である。煙突がひし形に配置されていたため、見る方角によって煙突本数が変化する様子を眺めることができたという。この映画でも、何事も視点を変えれば、別のものに見えるという暗喩が込められていたとも考ええられるが、深読みだろうか。
この煙突は1964年の取り壊されており実際に見る機会はなかったが、タイトルバックの煙突を空撮した映像は貴重である。