- 作者: 山内太地
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2008/12/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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まずタイトルがおかしい。編集者が流行の「下流」という言葉を使ったのだろうが、「下流大学」を茶化すのではなく、全編たいへん真面目な本である。
全国700大学をめぐったという筆者が足で稼いだ大学紹介ルポを中心に、大学教育への熱い重いが溢れている。膨大な取材経験に基づく考えには説得力がある。進学を考える人は一読に値するだろう。全国の大学がいかに多様であるかにあらためて驚かされる。
本書では、大学を偏差値と就職だけで語る風潮に警鐘を鳴らし、大学教育の意義は、各学生が「自発的に何をどれだけ学び、研究するか」であると力説する。一貫してマンモス私大のマスプロ教育を忌避しているのも特徴的だ。
とはいうものの、表紙にある「一流大学より未来が開ける」という能天気なキャッチフレーズは実際どうなのかと思う。Introductionに偏差値ランキングを示し(p.9)、これ以下の大学は「下流大学」と世間でみなされていると、一応に基準を示している。
本書の主張は、こうした偏差値偏重の風潮を戒めることにもあるのだが、リストにある大学名を眺めていると、さすがにこれ以下の大学では、いかに大学で鍛えようとも無理ではないかと思わなくもない。
こうした議論が起こる原因のひとつは、進学率が上がるにつれて大学が増えて、もはや従来の大学という枠のなかでまともな議論できないということだろう。これは700という膨大な数の大学を訪問したということからも明らかだ。
そうすると、どうしてもランク付けが必要となり、「偏差値」と「就職」が分かりやすい「ものさし」として普及していると思われるし、社会での体験もそれと大きく乖離するものでないことを、社会も納得しているのだろう。
本書にあるような崇高な考え方は、新しい時代の進学ガイドラインとして一定の支持を得る可能性はあるが、それにも時間がかかるだろう。現状ではどう考えても、いわゆる有力校を目指して勉強に励むのが最善である。人脈、情報、機会、資金などあらゆる資源が有力校に集まっている現実は決して無視できない。