退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

『積木の箱』(1968)

角川シネマ新宿で、「積木の箱」(1968年、増村保造)を鑑賞する。「増村保造 生と愛」という企画の最終日。

三浦綾子の同名小説の映画化。原作は未読だが、本当にこんな話なのかと思うほど、増村節全開の演出。中学生男子の思秋期の煩悶を描くはずなのだが、全編にわたり松尾嘉代のお色気が充満している。色狂いの内田朝雄も相変らずの押し出しの強さで、だれがメインかわからなくなる。監督曰く、「少年のヰタ・セクスアリス」。

本作は、緒形拳の追悼作品と銘打たれていたが、役回りはいたって地味だし、われらが若尾文子も割烹着で雑貨屋を営む女主人を演じていて精彩を欠く。どうしても若尾を使いたかったのか。

見どころは、松尾嘉代と梓英子の激しいやり取りだろうか。どうせならもっと派手にやればよかったのに。まあ奇矯な演出になってしまうのは、増村の持ち味なのだろう。嫌いじゃないけど…。

今回の増村特集では、本作品のほかに「千羽鶴」「妻二人」を見たが、いずれもDVDが発売されていないようだ。ちょっとさみしい。

【追記】DVDが発売されました。