新文芸坐で藤純子主演・「緋牡丹博徒」シリーズを鑑賞。「鬼才・加藤泰 情念の鮮烈と奔流」のなかの2本。どちらも映像美を追求した画面が美しい。
「花札勝負」は、典型的な任侠映画で、「お約束」が満載だ。任侠道をかたくなに守る嵐寛寿郎がカッコいい。影の主役か。高倉健が途中から参入する殴りこみも実に模範的といえる。対立する親分の息子と娘との色恋沙汰が発端で抗争に発展するのだが、その東京に進学したバカ息子が情けないというか、やや脚本に説得力に欠けるところが惜しい。
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一方、「お命戴きます」は、公害問題を題材にとり、70年代の世相を反映していると思われる異色作。ラストの藤純子の殺陣での濃厚なエロティシズムはシリーズ最高か。鶴田浩二は途中で闇討ちにあい絶命するので、お竜は、単身、喪服姿で葬式の席に殴りこみをかける。途中、かんざしを手裏剣代わりに投げて髪がほどけ、黒髪を振り乱しての立ち回りは圧巻。その後、ボス(河津清三郎)との対決で、喪服を切られ緋牡丹の刺青が覗くところが抜群にいい。鶴田の子どもと戯れるシーンとの対比も見事である。
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加藤泰は、この2作のほかに『緋牡丹博徒 お竜参上』(1972年)も監督していて、今回の企画上映にも取り上げられていた。その日は、鈴木則文監督らによるトークショーもあったのだが、行けなかったのが残念。