退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

朝ドラ「らんまん」が最終回でした

朝ドラ「らんまん」は、2023年度前期放送のNHK連続テレビ小説」第108作。長田育恵作。植物学者・牧野富太郎をモデルとしたフィクション。主演は神木隆之介

男性が主役の朝ドラと聞いて嫌な予感がしたが、丁寧につくられていて安心して最後まで面白く見られた。実在する人物をモデルとするとあまり無茶なことはできずに地味になるかなと思ったが、妻・寿恵子役を演じた浜辺美波が好演しているのがよかった。主人公の神木は影が薄いと感じたが、その分浜辺の出番も多く、前に出てきたのが奏功している。浜辺には演技力というより華がある。ヅカの娘役もかくありたい。

総じて男性が主人公の朝ドラは夫婦愛が描かれて、妻の内助の功で夫が夜に出るというパターンが多い。本作のその流れのとおり、寿恵子が万太郎を経済的に支えることになるが、「これでは万太郎はヒモだろ」と思う場面も多々あった。これも昨今の女性の社会進出を反映した設定だろうか。

ほかに印象に残ったのは、万太郎が描く精緻な植物画の素晴らしさである。テレビ画面を通しても伝わってくる細かい画には感服した。小道具として植物画が描いた人が誰なのか気になるほどだ。

また最終週のシナリオもちょっといい。週明けにいきなり時代が飛んで、夫婦とも亡くなっている場面から始まる。「え、もう死んでるの?」と思っていると、ナレーションを務めていた宮崎あおいがドラマに登場するという仕掛けはよくできている。そして万太郎に博士号を授与されて、寿恵子も病死するシーンが描かれる。その後、万太郎の「俺たちの戦いはこれからだ」というようなストップモーションで終劇。シナリオが冴えている。

劇中でひとつ気にかかったのは南方熊楠のこと。なぜか南方だけ実名なのは不思議。結局ストーリーには絡んでくるが登場せず。南方を誰が演じるのか気になっていたので個人的には残念だった。

当初不安だったが半年間十分に楽しめた。近年の朝ドラのなかでは秀作と言ってよいだろう。

連続テレビ小説 らんまん Part2 (2) (NHKドラマ・ガイド)