岸田内閣による、年収が一定額に達すると年金などの社会保険料負担で手取りが減ってしまう「年収の壁」問題に対する取り組みが報じられた。人手不足が深刻な社会問題となりつつある昨今の社会状況を受けてのことである。
詳細は政府発表を見てほしいが、条件を満たせば一定期間は保険料負担が生じないようにすることなどを骨子とする。
こうした話を聞くと、なぜいまどき「年収の壁」が残っているのか不思議でならない。いまどき夫婦は2馬力で働くのが当たり前だし、配偶者であるだけで所得税が控除されたり、社会保障の負担が軽減されたりする意味がわからない。そもそも夫婦は平等な立場であるべきなのに、どちらか一方がもう一方を「扶養」しているが不自然だと思わないのだろうか。
最近は女性の社会参画が声高に叫ばれているが、これを実現するためにも、上記の配偶者控除や社会保障費優遇を廃止して、個人ベースに再構築するべきだ。同様に「第3号被保険者」も廃止しなくてはならない。今回の岸田内閣の政策では、壁が少しだけ動くだけで根本的にはいままで変わらない。
なぜ思い切って、そうした政策を取れないのかを考えてみると、実質増税になる人が少なからずいるということもあるだろうが、自民党の「古い家族観」に根本原因があるとみるのが正しい。「選択的夫婦別姓」がいつまでも実現しない理由も同根であろう。