退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

昼ドラ『愛の嵐』を見終わりました

再放送されていた昼ドラ『愛の嵐』(全69話)を見終わった。1986年に放送された東海テレビ制作のテレビドラマ。エミリー・ブロンテ嵐が丘」を昭和初期の日本を舞台に翻案した作品で、田中美佐子渡辺裕之らが出演している。

ちょうどドラマが佳境に入ったところで、主人公・渡辺裕之さんの訃報がと飛び込んできたので驚いた。渡辺さんが演じた猛が原作のヒースクリフにあたる。

ストーリーはシンプル。渡辺さんが演じた猛の復讐譚が基本。

甲州の大地主、三枝家で何不自由なく育てられた娘・ひかる。ひかるの五歳の誕生日に、父・伝右衛門(中尾彬)が孤児である猛を連れ帰り、猛は使用人として三枝家で暮らし始める。地主の娘とその使用人、この二人の幼い愛は成長につれて恋に変わり、許されぬ愛に胸を焦がす。やがて戦争をはさんだ激動の時代が、二人の運命の歯車を狂わせていく……。

ざっくりこんな話で「嵐が丘」をうまく潤色した導入部である。その後、伝右衛門は事業が頓挫して首が回らなくなり娘・ひかる(田中美佐子)を成金の大河原勇作(長塚京三)と政略結婚させたり、それでもついに破産して家屋敷を勇作に取られてしまい自害する、というハードな展開。三枝家の長男・文彦(佐藤仁哉)は何やっていたのだろう。

戦争が激しくなり猛(渡辺裕之)も徴兵されて出征する。戦後、戦死したと思われた猛は、ビジネスで成功して甲州に戻り、大恩のある伝右衛門のため勇作への復讐を始める。復讐のためには手段を選ばなず、勇作の妹・秀子(芦川よしみ)と偽装結婚するという鬼畜ぶり。秀子がかわいそうだろ!

猛と勇作の戦いが激化するが、ついに勇作は「負けた…」とシャッポを脱ぐ。猛はトドメを刺さずに再起のための資金を残しやる余裕を見せる。復讐を遂げた猛は、ついにひかると結ばれる。ワインの勉強をするために二人でフランスに渡ることになる。その前に伝右衛門たちの墓前にお参りして参道を降りていく場面で終劇。絵になるふたりである。

さて、このドラマは田中美佐子渡辺裕之の主演コンビによるところが大きいが、見どころは他にもある。一つはひかるの子供時代を演じた子役たち。とくに少女期を演じた谷本重美(のち小川範子)が目をひいた。かわいい。当時話題になったのも納得である。

もうひとつは芦川よしみである。はじめは田中美佐子を追いかけていたが、途中から芦川よしみのほうが断然魅力的に思えてきた。どことなくバタくさいところがいい。役としても猛に利用されるだけの女で美味しい。もっと劇中で暴れてもほしかったが、穏やかに身を引くのはやや物足りない。

なかなかよくできた帯ドラマでわかりやすいのは美点。もっとドロドロとした激しい展開にもできただろうが、抑えた無難な演出なのがよかったのだろう。その後、同工異曲の『華の嵐』『夏の嵐』がつくられたことを思うと成功したドラマと言える。