退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

藤子不二雄A「ひっとらぁ伯父サン」を読む

先日亡くなった藤子不二雄Aの追悼番組で取り上げられていた、ブラックユーモア短編「ひっとらぁ伯父サン」を読んでみた。初出は1969年『ビッグコミック』4月1日号(小学館)。

ひっとらぁ伯父サン (1979年) (Sun million comics)

東京郊外の平和な住宅地にアドルフ・ヒトラーそっくりの男が流れ付き、そのまま住み込むという話。その男は居候先の少年を手懐けて次第に狂気の本性をあらわす。やがて少年たちを勧誘して黒シャツ隊を組織して、陰謀をめぐらせて権力を狙う姿が描かれる。ヒトラーの「ワーグナー好き」「酒を飲まない」「肉を食べないベジタリアン」など、ヒトラーの嗜好を活かしているところも面白い。

件の追悼番組では「正当な少年漫画には向いていない」といったことを本人が語っていたそうだが、藤子不二雄Aは『笑ゥせぇるすまん』に代表されるブラックユーモア漫画を多く遺している。本編もそのなかの一作で味わいがある。

今回は『悪が生まれる (家族で楽しむ「まんが発見! 」3) 』という短編集に収録されていたのを読んでみた。本作のほかにも手塚治虫永井豪などによる珠玉の短編が収められていてなかなか楽しめる。