テレビアニメ「蒼き流星SPTレイズナー」(全38話)は、1985年から1986年に日本テレビ系列で放送された日本サンライズ製作のSFロボットアニメ。高橋良輔監督作品。
このアニメは一部の好事家からの評判は高かったが、当初の予定から大幅に短縮されて打ち切りとなった。見てる側が呆気にとられるほどのひどい打ち切られ方であり、多くのファンが悲しい想いをしたことはいまも忘れら得ない。
その完結編は1986年にOVA(3話)として発売された。今回BS12でOVAが放送されたのでひさしぶりに見ることができた。ノスタルジーに浸ることができた。ちょっと思ったことを書いてみる。
テレビシリーズは2部構成。第1部では火星での主人公エイジらと敵異星人・グラドスの初接触からグラドス軍による本格的な地球侵略までを描き、第2部ではそれから3年後のグラドス支配下に置かれた荒廃した地球が舞台となっている。
OVAは、ACT-I 「エイジ1996」、ACT-II 「ル・カイン1999」、そしてACT-III 「刻印2000」の3話から構成され、ACT-I とACT-II はテレビシリーズの総集編。ACT-IIIが打ち切りになって制作されなかった完結編となっている。
まずこのテレビシリーズの総集編がイケてない。レイズナーの魅力を取りこぼしているのが残念。ACT-I に強烈なキャラクターであるゴステロが出てこないし、恐怖の無人機スカルガンナーも出てこない。まあ尺が短いからストーリーを追うので精いっぱいののだろうが惜しい。これから見ようと思う人は、総集編でなくテレビシリーズを見てほしい。
真の完結編である、ACT-III 「刻印2000」も消化不良。打ち切られたテレビシリーズを完結させようとした意気込みは買うが正直不満が残る。
いちばんの不満は、敵グラドスの社会や文化が十分に描かれていないこと。第1部は、米ソの東西冷戦を背景にしてそれなりにリアリティがあり、グラドスが正体不明の敵ということでギリギリ物語が成立していた。しかし第2部のグラドスの占領下の地球の描写が幼稚過ぎる。『北斗の拳』のような世界観でついていけない。
グラドスの人たちと地球人とのインタラクションはどうなっているのか。グラドスにはどんな文化があるのか。などなど、異文化理解の基本がなおざりにされている。いまみても、これでは打ち切られても仕方ないかなと思ってしまう。
さらに、新作であるACT-III 「刻印2000」も「なんだかなぁ~」といううちに終わってしまう。最後にエイジとアンナが抱き合うシーンで、「抱きしめて〜」とエンディングテーマが流れるのは「まあ、これしかないよね」と納得するが、SF的にはいろいろ未消化な部分が残る結末である。
メカデザインや作画は素晴らしいし、主人公たちが火星から地球に向かう場面は「十五少年漂流記」のような趣で、傑作の予感を感じたのだが、後半見事に失速してしまった惜しい作品である。
子ども向けアニメに高望みしすぎだろという指摘はそのとおりなのだが、マスターピースというのは年齢を超えて訴えるものがあるはずである。ひさしぶりに「蒼き流星SPTレイズナー」のOVAを見てそんなことを思った。