退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

ミニシアター「アップリンク渋谷」が5月20日に閉館というニュースで思ったこと

ミニシアター「アップリンク渋谷」を運営する有限会社アップリンクは、5月20日をもって同シアターを閉館すると発表した。

www.uplink.co.jp

同社による「アップリンク渋谷閉館のお知らせ」のなかで、以下のようにコロナ禍の影響について言及している。

昨年は助成金補助金もあり、ぎりぎり生き延びることができましたが、今年はさすがに限界を超える状態で、再投資をしても先が見えない状況となり、閉館という決断を余儀なくされました。

設備や機材の老朽化が進んでいるところにコロナ禍による痛手が加わり、もちこたえられなかったのだろう。渋谷のミニシアター文化は、私が映画にもっとも傾倒していたころの社会現象であり、さびしい限りである。

アップリンク渋谷は、今は宇田川町にあるが、私は神南にあったころのカフェ・シアター「UPLINK FACTORY」の印象が強い。NHK放送センターの近くだった。

何度か行ったことがあるが、カフェ・シアターという名前のとおり、オシャレはカフェのようにテーブルが配置されていて、そこに小さめのスクリーンが設置されていた。ある意味贅沢な空間で、たしかチケットはワンドリンク付きだった。

一度、映画『星くず兄弟の伝説』(1985年、監督:手塚眞)を見にふらりと立ち寄ったとき、わずか客が2組しかいなくて「え、マジ?」と思った記憶がある。たしかDVDの販売元もアップリンクだったか。

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かつては映画館に足を運ばないと見れない作品がたくさんあった。しかしいまはほとんどの作品はパッケージ化されているし、ネット配信も普及している。たしかに映画館ならではの体験は貴重だろうが、昔ほどミニシアターならでは価値を見いだせなくなってきている。

コロナ禍が終息した後もミニシアターについては“明るい未来”は見えない。ミニシアター文化、さらに名画座文化は令和の世では消え去る運命なのか。「アップリンク渋谷が閉館する」というニュースに接して、そんなことを思った。