退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『十階のモスキート』(1983) / 破滅していく現役警察官を描いた内田裕也主演の傑作

神保町シアターの《にっぽんのアツい男たち2 ~無鉄砲野郎の美学》で映画『十階のモスキート』(1983年)を鑑賞。崔洋一監督の映画デビュー作。主演は内田裕也

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中年の現役警察官の男(内田裕也)は出世から見放されいまだ交番勤務だ。愛想を尽かした妻(吉行和子)は娘(小泉今日子)を連れて家を出く。気晴らしにと買ったパソコンをローンで買うが、毎月の養育費、バーのツケ、ギャンブルの借金などで多重債務者になり首が回らなくなる。借金の取り立てにヤクザが交番までくる始末。ついに男は郵便局に押し込み強盗に入るが……。


The Mosquito on the 10th Floor - 「十階のモスキート」 予告編

内田裕也が映画『水のないプール』に続いて企画した作品で、妻に離婚された現職警察官の転落を描く。まっとうな職業の主人公が破滅していき、刹那的な情事を重ねるあたりは『水のないプール』との共通点が見られる。

まず女優のキャスティングがよい。中村れい子、アン・ルイス、風祭ゆき、吉行和子というチョイスはなかなかの目利きだ。とくに婦警役の風祭と内田の情事は必見。また小泉今日子が主人公の娘役で映画初出演を果たしていることにも注目したい。

この作品は、いま見ると当時の世相をうまく切り取られている点もよい。当時のパソコンや秋葉原の風景などは本当に懐かしい。日本経済の停滞が指摘されているが、科学技術は当時から確実に進歩しているなと思わされる。さらに、いま振り返ると不思議な風俗の「竹の子族」がフィルムに収められているのも資料的な価値がある。

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私は本作の内田はかっこよくて好きだが、この映画は内田をかっこよく思えるかどうかポイントだろう。いまの若い人が見てどう思うか気になる。かっこいいと言えば、競艇予想屋を演じるビートたけしが初々しくてとてもよい。お見逃しなく。

当時は現職警察官がこれだけの犯罪に手を染めるのは前代未聞のスキャンダルだったかもしれないが、いまならそれほど驚かないだろう。世の中の移り変わりは速い。

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