退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『明日にかける橋 1989年の想い出』(2018) / 日本版「バック・トゥ・ザ・フューチャー」というキャッチコピーだが、ちょっとちがう

DVDで映画『明日にかける橋 1989年の想い出』(2018年、監督・脚本:太田隆文)を鑑賞。まったくノーマークの映画だったが、日本版「バック・トゥ・ザ・フューチャー」というフレーズに惹かれて手に取る。主演は鈴木杏

明日にかける橋 1989年の想い出 [DVD]

明日にかける橋 1989年の想い出 [DVD]

主人公みゆき(鈴木杏)は地方都市で暮らす30代のOL。弟・健太が交通事故で死んでから家族は崩壊し、みゆきが家族を支えていた。決して幸福とは言えないが、半ば諦めて日常を過ごしていた。そんなある日、みゆきはタイムスリップして健太が死んだ1989年に戻ってしまう。そこで、若き両親(板尾創路田中美里)、まだ元気な健太、そして女子高生のみゆき自身(越後はる香)に出会う。主人公は、この時代に健太を救うことができれば、未来の家族が幸せになれるかもしれない、と思いつくが……。


「明日にかける橋 1989年の想い出」予告篇・東京版

このようなタイムスリップものはさまざまな矛盾を観客に納得させるのが難しい。ご多分に漏れず、この映画もツッコミだしたらキリがない。しかしヒューマンドラマはしっかりと描けていて、細かいことはどうでもよくなるのは美点か。ラストに主人公が現代に戻ると、健太が生きていて、幸せな家族が待っていた、というのは安易だが、納得のエンディングで後味はよい。

キャスティングで驚いたのは、女子高生時代の主人公はるか役に演技未経験だという越後はる香が抜擢されて見事に演じていること。すごい冒険にも思えるが、このあたりは大林宣彦監督の影響だろうか。ほかには、理科の先生役の藤田朋子のベテランらしい演技もよかった。

主要キャストはともかく、モブがやたらに素人っぽいと思ったが、静岡県袋井市磐田市あたりの地域振興のために作られた映画で地元の人たちが出演しているようだ。DVDに収録されていたメイキング映像を見ると、地元の人たちが映画作りを支えていたことがよくわかる。こうした現場の雰囲気は不思議と映像にも出るものだ。

大手資本とは無縁の映画で、決して予算が潤沢というわけでもなかったのだろうが、逆に制約も少なく自由に撮れるということもあるのだろう。今回はそれがよい方向に作用したいる。掘り出し物だった。おすすめです。