新文芸坐のオールナイト《追悼・大杉漣 いつもそこにいた名バイプレイヤー》で映画『ポストマン・ブルース』(1997年、監督・脚本:SABU)を鑑賞。主演は堤真一。
郵便局員の沢木(堤真一)は単調な郵便局の日常業務にうんざりしていた。彼は郵便物を持ち帰り、自宅のアパートで勝手に開封するようになる。そこで見つけたのが、余命わずかの不治の病の少女(遠山景織子)の手紙だった。そして沢木はなぜか運び屋と殺人犯だと勘違いされ、警察とやくざから追われるはめになり大追走劇が始まる。郵便配達員と少女の心の交流を軸に、警察とやくざ、さらに殺し屋が絡んで大騒動になるが……。
一歩間違うとドッチラケになるおバカ映画を、最後まで中だるみなしに疾走させて強引にまとめてしまう手腕は見事。疾走といえば、3人で自転車で疾走する終盤のシーンは最高。日本映画も捨てたものではないと思える傑作。超オススメです。
さて肝心の大杉漣は、末期ガンに冒された「殺し屋ジョー」を演じて、映画上の使い古された定形の殺し屋像を体現している。トレンチコートを着こなし、サングラスが似合う二枚目半の殺し屋だが、飄々とした立ち振舞が妙に役にはまっていて面白い。
余談だが、この当時の郵便配達員は制服・制帽を着用のうえ、ネクタイまで締めてきちんとした格好している。一方、いま見かける配達員は実用的なのだろうがずいぶんとラフな服装で仕事をしているようだ。郵政民営化のためか、郵便局も威厳がなくなったなと感じた。