退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『予兆 散歩する侵略者 劇場版』(2017) / スピンオフドラマだけどこっちの方がいいね

新文芸坐の恒例企画《気になる日本映画達2017》で映画『予兆 散歩する侵略者 劇場版』(2017年、黒沢清監督)を鑑賞。前川知大率いる劇団「イキウメ」の同名舞台劇の映画化作品『散歩する侵略者』(以後、正編と呼ぶ)のスピンオフドラマ(WOWOWで放送)を再編集した劇場版。正編との2本立て上映だった。「正編」を先に見るのが正しい順番だろう。

物語の背景は正編と同じ。地球人類から〈概念〉を奪う宇宙からの侵略者を描くアナザーストーリー。原作に縛られていないためか、こちらの方が正編より黒沢清監督らしいし、映画らしいと言ってもよい。とくにラストの廃工場のシーンはよかった。

この劇場版は、夏帆染谷将太の夫婦が、侵略者である新任の外科医(東出昌大)から逃げる逃亡劇。おかっぱボブの夏帆には〈概念〉を取られない特殊能力が備わっていたり、侵略者の「ガイド」から逃れようとすると染谷将太の腕が痛くなったり、正編にはなかった設定が加わったホラー仕立てになっている。


映画『予兆 散歩する侵略者 劇場版』予告編

侵略者を演じた東出昌大は、映画『寄生獣』(2014年)でもそうだったが、普通の人間を演じるより、今回のような「人外」を演じたほうが輝くようだ。長身で存在感が人一倍あることもあるし、演技力に難があることがとりあえず糊塗されるためかもしれない。映画『関ヶ原』(2017年)で小早川秀秋を演じたときにも思ったが、喋らなければカッコいいのに……。惜しいなといつも思う。

個人的には正編よりこのスピンオフドラマの方が好みである。監督は、実はこちらを撮りたかったのかもと思ってしまう。機会があればドラマ版(全5話)を全部見てみたい。