公文書管理と情報公開が民主主義社会の基盤であることを教えてくれる良書。
この本が刊行されたあとも、森友・加計問題や自衛隊の日報などの問題が噴出して政治が混乱している。幸か不幸か本書は宣伝が必要ないほどタイムリーな本になっている。

- 作者:瀬畑 源
- 発売日: 2018/02/16
- メディア: 新書
半島情勢が緊迫の度合いを増すなか、こんなことに時間を浪費するのは国益を損ねると主張する人たちがいる。たしかに海外情勢は無視できないが、いま問題になっているモリカケ問題などは公文書管理が適切にされていれば、行政文書を参照して政策決定の過程を容易に検証できるので、そもそも問題とならなかったはずだ。筆者が本書に書くとおり〈公文書管理は日本の諸問題の核心〉なのである。
にもかかわらず、国会が公文書管理の改善に取り組まないのが理解できない。中央官僚が「文書は全部破棄したので存在しません」としれっと国会答弁し、国民の代表である国会が愚弄されている事態をどう考えているのだろう。この答弁の映像に「えー」と思った人も多いのではないか。「民は由らしむべし,知らしむべからず」と官僚たちが本気で思っているのかもと疑ってしまう。
こうなると官僚のマインドセットに依存するのではなく、制度設計を改めて公文書管理を正常化することは不可欠であろう。本書にも公文書管理法改正についての言及がある。これがどの程度効果があるかわからないが、いまのままではマズイのは明らかである。
事態を改善するには、まず国民がこの問題について当事者意識を持つことが大切だ。そのために本書で問題をざっくり把握することは有用だろう。