夭逝した将棋棋士・村山聖を題材にした大崎善生の小説『聖の青春』(2000年)は、昨年松山ケンイチ主演で映画化されて注目を集めた。私も公開時に映画館まで足を運んで鑑賞した。
この作品は、映画よりずっと前に藤原竜也主演によりテレビドラマとして映像化されている。DVDが未発売でこれまで見る機会がなかったが、今回CS放送で見ることができた。2001年の新春スペシャルドラマとしてTBS系列で放送された2時間ドラマである。
このドラマでは、村山聖(藤原竜也)の訃報の電話を師匠・森信雄(小林稔侍)が、新幹線の車内で受ける場面から始まり、師匠が聖の生涯を回想する形で進行する。
映画版では希薄に思えたふたりの師弟愛が濃厚に描かれていて嬉しい。映画版で省かれていた不満だった、大阪の師匠の部屋での共同生活のシーンも登場する。共同生活していた時期にふたりで通っていた定食屋がエンドロールに使われているのも憎い演出だ。
主演の藤原竜也は当時20歳前ぐらいだろうか、2時間ドラマ初主演だったという。中学生から晩年(29歳)までを演じるという難しい役だが、中学生を演じても違和感がないのは持ち味だろう。この後、映画や舞台で活躍するようになる才能の片鱗を感じさせる演技で素晴らしい。
一方、師匠の小林稔侍はいつもの小林稔侍。演技に幅がないというか、いつも同じ演技のように思えるが、このドラマに限って言えば役に合っている。献身的に聖を支える師匠をよく演じている。「冴えんなぁ〜」という口癖も堂に入っている。
予算が限られているドラマなので仕方ないだろうが、聖が東京で部屋をさがすシーンはあるが、肝心の借りた部屋の映像がないのは惜しい。原作を読んでどんな部屋だったのか興味があったのだが……。
15年前のテレビドラマなので、出演者のなかにはすでに他界されている人もいたり、とても若くて現在の印象と違う人もいたり、なかなか感慨深く見ることができるだけでなく、良質のヒューマンドラマとして見ごたえがある。
なかなか見る機会がないと書こうと思ったが、Amazonビデオで見ることできるようだ。ただし執筆時プライムではない。いずれにせよ藤原竜也のファンは必見であろう。