目黒シネマで『3月のライオン【前編】』『3月のライオン【後編】』(2017年、監督:大友啓史)を二本立てで見てきました。以前も『ちはやふる』前後編の同時上映を見に行きましたが、こうした企画はありがたいです。
羽海野チカの人気コミック「3月のライオン」の映像化作品ですが、これに先立ちテレビアニメ化されています。こうしたコミックの実写版とアニメ版で同時期に映像化を展開するのが最近の流行のようです。
主演は神木隆之介。神木が高校生の桐山零を演じたこともあり、総じて原作と比べて年齢の高い役者が演じているのはちょっと気になりました。キャスティングについてあとで触れることにしますが、映画全体としては総花的というか無難な仕上がりです。
前編では、零の過酷な生い立ちから始まり、酔いつぶれたところを川本あかり(倉科カナ)に介抱され、川本三姉妹と関わることにより徐々に人間性を取り戻します。それに伴い、霊は棋士として成長していきます。また登場人物がこれまでかというほどに登場して物語の背景を形づくっていきます。
後編では、前篇の背景を受けて原作で印象的だった、ひなた(清原果耶)のいじめ、三姉妹の実父の登場といったエピソードを盛り込みつつ、将棋では霊が宿敵・後藤(伊藤英明)を破り、タイトル戦の挑戦者になり、名人・宗谷冬司(加瀬亮)に対戦するところで終ります。原作が連載中なので仕方ありませんが、ポスターには「完結」とあるのにこれがエンディングなのはどうなのか……。それでも一応納得できる終わり方と言えるでしょう。
映画としては無難で特別に面白いというわけではないので、気になったキャストについて3人ほと取り上げてみます。
まず島田開を演じた佐々木蔵之介がすごい。原作の島田はもっと冴えない外観なので、佐々木はかっこよすぎるのだが、将棋の対する姿勢がスクリーンから伝わってくるようで、まさに適役でした。佐々木のおかげで映画としても救われた部分は大きいでしょう。功労賞です。
次に幸田香子を演じた有村架純。香子は両親を失った零を引き取った育てた棋士の実娘で、棋士を目指していたが、零に追い抜かれたことで弟ともども棋士への道を断念させられます。そのため幸田家は崩壊してしまい、香子は零に対して複雑な思いをぶつけます。そんな役ですが、有村の屈託のない丸顔には、心の闇というか影が感じられません。明らかにミスキャストだと思いますが、スチルは原作の香子にそれなりに似ているのは面白いです。
最後は、三姉妹の長女・川本あかりを演じた倉科カナ。笑顔はすばらしいが体型がダメ。原作のグラマラスなスタイルが微塵もなくイメージが台無しです。それなら誰だったらいいのか言われても心当たりがありません、日本の若い女優はみんな痩せ過ぎているのです。どうせなら二海堂晴信(染谷将太)のようにCGで活用してもよかったかもしれません。倉科の首から下はCGでボン・キュッ・ボンにするぐらいの英断がほしいところでした。やはりアニメ向きの作品なのかもしれません。
映画『3月のライオン』予告編
涙、涙の『3月のライオン 後編』予告編
今回、前編・後編を通して見て損したとは思いませんが、かろうじて及第点というところでしょうか。まあ無難な仕上がりというのがぴったりです。既に書いたように映画としてのエクスタシーとは無縁の映画ですが、原作を読んでいれば、原作のキャラクターと役者たちとの対比に注目してそれなりに楽しめる映画だと思います。