退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

コミック『ベルサイユのばら』(第13巻)を読んでみた

2014年、少女マンガの金字塔『ベルサイユのばら』の連載が終了してから40年の時を経て、エピソード編と銘打った新作の短篇集(第11巻)が発表されて話題になりました。本書はこのエピソード編の3冊目となります。

今回は2つの長編エピソードが収録されています。

ひとつめは、エピソード7「オスカル編」です。女性に生まれながら男として育てられることになったオスカル。激動の人生を歩むことになる彼女の前にたびたび謎の女性が現れます。その女性はオスカルに向かって言う。「わたしはお前の諦めたもののすべてだ!!」と。

女性として育っていたら得られただろうものすべてと引き換えに過ごした苛烈な人生に悔いはなかったのか。オスカルは、あらためて軍神マルスの子として生きることを誓い、歴史の激流に身を投じていく。

「諦めたものすべて」という、もうひとりのオスカルがビジュアル化されているのが見どころか。

もうひとつは、エピソード8「マリー・アントワネット編」です。いまも高級時計メーカーとして知られる「ブレゲ」(Brequet)の創始者が登場し、王妃アントワネットから最高の時計をつくように注文を受けます。無茶振りです。

物語は、ロザリーがジョルジェ将軍にアントワネットの遺品を届けるところから始まります。遺品はジョルジュ将軍が、獄中のアントワネットを慰めるために提供したブルゲの時計でした。ギロチンで処刑されるまでアントワネットが過ごした牢獄のなかに時計が時を刻む音が響く場面が哀愁を感じさせます。

その後、アントワネットが注文した時計はブレゲの後継者が完成させますが、注文主はすでにこの世にはいませんでした。この時計は紆余曲折を経て、後継者により復元されマリー・アントワネットの名をいまに伝えているといいます。老舗高級時計メーカーの歴史を感じさせるエピソードです。

私は高級時計には縁遠いですがブレゲの名前ぐらいはは知っていました。趣味の世界には、まったく理解できないものと、一応理解はできるが手を出さないものとがありますが、高級時計は後者でしょうか。

ブレゲほどではないにせよ腕時計に凝っていたときもありましたが、いまは普段は「チプカシ」を使っています。先日電車で見かけた塾通いの小学生が「チプカシ」を付けていたのを見つけて、もう少しいい時計を付けた方がいいかもと思い始めていますが……。

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