遅ればせながら映画『シン・ゴジラ』(2016年、総監督・脚本:庵野秀明)を見てた。どうせなら歌舞伎町の TOHOシネマズ新宿まで足を伸ばそうかと思ったが、スケジュールの都合でやむなく近くのシネコンで鑑賞。
これほど事前に情報がインプットされた状態で映画を見るのは、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』以来だろうか。すっかりハードルを上げて映画館に言ったが、期待は裏切られなかった。今年見た映画で最も面白かった映画のひとつである。
紛れもない庵野秀明作品
一目瞭然で庵野作品だと誰でも分かる開き直った演出が潔い。もはやエヴァの別バージョンだと言っても構わないだろう。エヴァで見たようなシーンが実写で再現されているているのも見どころだ。
これほどエヴァを意識されられると、「で、エヴァの続編はどうなったの?」とツッコミたくなる。最近「アオイホノオ」の最終話を再放送で見たが、劇中で庵野が主人公に向かって「プロとしての責任」がどうのこうのいうシーンがあった。「おまいう」と思ったことを思い出した。
まあ作り手の色がこれほど鮮やかに出ている映画も珍しい。
自衛隊大活躍
自衛隊が大活躍しているのも見どころだ。ゴジラが突然登場したので、メーサー兵器などの対ゴジラ用兵器は登場せず現用兵器でゴジラを迎え撃つ。攻撃ヘリコプターでゴジラを攻撃するシーンが圧巻。
途中からコジラが強大すぎて自衛隊の装備ではまったく対抗できずに絶望的な戦闘となるが、自衛官は勇猛果敢に職務をまっとうする。実際にこうした状況になったら逃亡兵が続出するのではないかと思うが、映画ではそうした描写がない。
まあ自衛隊の全面協力を得ているので不名誉な描き方はできないのだろうが、政治家や官僚の描写が辛辣だったのに対して自衛隊にはずいぶん甘いなと思った。
石原さとみの存在感
怪獣映画にはヒロインが必要だという点には異論は認めたない。本作では石原さとみがが役割である。
しかし思い出すほどに珍妙なキャラクターである。日本人の祖母と米上院議員の父親に持つアメリカ大統領特使という設定が謎すぎる。ついには「いずれアメリカ大統領になる」と言い出したり訳がわからない。ストーリー上、この役は必要だったのだろうか。
しかも「英会話のイーオン」仕込み(?)の中途半端に流暢な英語を披露。とにかく映画のなかで浮いているのだが、その分存在感は大きい。不思議と印象に残ったので、石原さとみとしてはオイシイ役だったのではないか。
メッセージ性は希薄
オタク映画としてはたしかに面白かったし、スクリーンに引き込まれたのは事実だ。しかし鑑賞後に何か心に残ったかと問われると返答に困る。ゴジラの作品背景を考えると、どうしてもポスト311としてメッセージを期待してしまう。
娯楽映画として楽しめればいいという意見ももっともだが、日本映画として何らかのメッセージがほしかった。その点はやや物足りない。