退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『ウォルト・ディズニーの約束』(2013) / 映画『メリー・ポピンズ』の製作にまつわる裏話

DVDで映画『ウォルト・ディズニーの約束』(2013年、監督:ジョン・リー・ハンコック)を鑑賞。1964年のディズニー映画『メリー・ポピンズ』の製作背景を描く。「メリー・ポピンズ」シリーズの作者であるP.L.トラヴァースの伝記映画でもある。

映画は、1961年にP.L.トラヴァース(エマ・トンプソン)がウォルト・ディズニートム・ハンクス)と『メリー・ポピンズ』の映画化について交渉するプロセスと、1907年に彼女がオーストリアで過ごした幼少期の2つの時間軸が交互に描かれる。

メリー・ポピンズ』が彼女の幼少期の体験と深く関連していることが、次第に分かってくる脚本が素晴らしい。この映画を見た後で、映画『メリー・ポピンズ』を見直すとこれまでとは違った見方ができるだろう。

映画には大いに満足したが若干不満もある。劇中でウォルト・ディズニーが作品のファンである娘のために『メリー・ポピンズ』の映画化に20年来にわたり固執しているとあるが、その娘はいっこうに登場しない。

P.L.トラヴァースの生い立ちを描くのであれば、ウォルト・ディズニーと彼の娘の関係についても同様に言及してほしかった。両者の背景がそれぞれ描かれてはじめて成立するのではと思ったが、天下のウォルト・ディズニーのプライバシーを描くのは難しかったのかもしれない。


Saving Mr. Banks Official Trailer #1 (2013) - Tom Hanks Movie

この映画の原題は、Saving Mr. Banksという。バンクス氏というのは『メリー・ポピンズ』に登場するメリー・ポピンズの父親を指す。P.L.トラヴァースの父親と同じく銀行家という設定で、父親を意識しているのは明らかである。この映画で描かれる父親の最期と照らし合わせると、「バンクス氏を救う」というのはなかなか趣のあるタイトルなのだが、邦題に活かされていないのは惜しい。