昨年末、なべおさみがTOKYO MXのバラエティ番組「バラいろダンディ」にゲスト出演して、この本を宣伝していたのを見ていずれ読みたいと思っていたが、ようやく手に取ってみた。
著者自らが知遇を得た昭和の大スターやアウトローたちの知られざる素顔を描く。昭和のスターたちは過大評価されているのではないかと読み始めたが、なるほど今の芸能人は決して敵わない迫力があったことは伝わってくる。
「昭和の偉人」として登場する人たちのなかには世代的に馴染みのない名前もあるが、それは時代の流れと割り切る必要があろう。それでも「華やかなハレの世界で人々を魅了する芸能人やプロスポーツ選手は、一流であればあるほど他人には見せられないケの世界をもっていた」と謳う話は興味深く読めるし、自分の生き方に参考にできることも見つかるはずだ。
数あるエピソードのなかでは、武勇伝の類になるだろうがハイジャック事件に遭遇したエピソードは新鮮だった。腹に雑誌を巻きつけて犯人と対決しようとするのは本物の男だなと思ったし、乗客からそのための同士を募ったら名乗りを上げたのは中小企業の社長たちだったというのも面白い。
犯人が逮捕されて事件が解決されたあと、飛行場にひとり取り残されてトボトボ歩いていくというオチは笑えない。日本航空はかなり加減な会社だなと思いながら読んでたが、後に日航が経営破たんしたことを振り返ると「さもありなん」というところか。
また、なべおさみと言えば、どうしても「明治大学替え玉受験」(1991年)を思い出す。この本の趣旨と外れるかもしれないが、暴露話があればぜひ読みたかった。事件後、芸能活動を自粛して生活が逼迫していたことは書かれているのだが、なべかやんとの親子関係は破綻しなかったのだろうかなど下世話な興味は尽きないのだが……。
独特のスタイルで決して読みやすい本ではないが、不思議と味がある。昭和がすごい時代だったということを思い知らされる本でもある。