新文芸坐で『クリード チャンプを継ぐ男』(2015年、監督:ライアン・クーグラー)を鑑賞。シルベスター・スタローンの出世作『ロッキー」シリーズの続編。ちなみに、その日の併映は本作と同じように過去のヒット作の続編である『ジュラシック・ワールド』(2015年) だった。
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まだロッキーで儲けたいのか、それじゃ「クリード」(creed)じゃなくて「グリード」(greed)じゃねーのか、と思ったがまあいいだろう。
この映画は、ロッキー(シルベスター・スタローン)のかつてのライバルであり親友だったアポロに隠し子アドニス(マイケル・B・ジョーダン)いて、何ひとつ不自由のない生活を捨ててボクサーを目指すというベタはストーリー。アドニスはロッキーに自分のトレーナーになってほしいと頼み込むが、ロッキーに断られる。しかしアドニスにボクシングの素質を見て取ったロッキーはトレーナーになる依頼を引き受け、ふたりで世界を目指す。
「ロッキー」シリーズに奥行きのある複雑な映画を期待するのも野暮なのだろうが、あまりに話がベタすぎる。まずアドニスがいい会社(いい大学も出てるんだろう)の出世コースや裕福な生活を捨ててまでボクシングに傾倒していく心情の変化に説得力がない。亡き父アポロの血というだけでは納得いかない。
さらに、父の七光のおかげでプロとしてキャリアがほとんどないのに、世界チャンピオンと対戦するというのも安易すぎる。このままチャンピオンに勝ったら笑えるなあと思いながら見ていたらさすがに判定負けだったので安心した。次回作への布石なのだろうが。
元々「ロッキー」シリーズにそれほど思い入れがないので見落としているかもしれないが、過去作品へのオマージュはいくつかも見つけることができる。「ロッキー」シリーズのファンならば、それだけでも十分に楽しめるだろう。またボクシングの試合を撮影する技術は過去作品から大幅に進歩していて、リング上の視点からの長まわしは見応えがある。過去作品を踏襲しているが、これは現代の映画なのだ。
この映画はアメリカで大ヒットしたという。その理由は観客は自分の人生をロッキーの人生に重ねることができるのだろう。私自身もロッキーとアドニスのどちらに心情的に近いかと言えば、ロッキーほど老いてはないが断然ロッキーである。過去作品を若いころ観た世代が社会でも後進を育てる立場ににきたという現われだろう。
そう考えると、この映画の「アポロの隠し子」というアイディアはライアン・クーグラー監督が持ち込んだというが、その若手を監督に抜擢して任せたというスタローンの器の大きさはすごい。スタローン本人と劇中のロッキーを重ねてみることができるのは、この映画に伝説的なストーリー性を与えている。