DVDで映画『イントゥ・ザ・ワイルド』(2007年、監督:ショーン・ペン)を鑑賞。原作は、ジョン・クラカワーのノンフィクション小説『荒野へ』で、1992年に実際に起こった事件でもある。
裕福な家庭に育ち、名門エモリー大学を優秀な成績で卒業した将来有望な若者(エミール・ハーシュ)が、両親への反発、あるいは物質主義偏重の現代社会への疑問からか、すべてを捨てて放浪の旅に出るロードムービー。
放浪中の様々な人たちとの出会いを経て、彼はアラスカの荒野に向かう。アラスカの自然のなかでひとりで暮らすなかで自分を取り戻していくが、自然の苛酷さは彼の生存を許さなかった。
おっさん世代から見ると、主人公の行動は身勝手なうえ無計画でナイーブ。まさに「認めたくないものだな。自分自身の若さゆえの過ちというものを。」を地で行っているような話で、まったく共感できない。
ただし、この映画は若者の未熟な行動を批判するでもなく、逆に賞賛しているのでもない。客観的な視点から若者の内発的動機から生じた行動を追っている。そのため鑑賞後も、爽快感とは対極にある何かすっきりしない感情が残る。
映像的にはアメリカの自然を捉えた映像美はすばらしい。一見の価値あり。一度、大きなスクリーンで見てみたい。
改めてこの映画を見て思ったのは、若者は死に際に何を思ったのだろうか、そして残された家族たちの心境はいかなるものだろうかということだ。とくに自慢の息子にこうした形で先立たれるのは悲劇にほかならない。
なかなか若者の心境を推し量ることはできないが、若い頃に見たならば別の思いを持ったのかもしれない。その意味では映画も人生のどのタイミングで観るかが重要なのだろう。