退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『はなれ瞽女おりん』(1977) / 愛した男は脱走兵だった(その2)

新文芸坐の《毎日映画コンクールに輝いた女優たち》で、映画『はなれ瞽女おりん』(1977年、監督:篠田正浩)を鑑賞。原作は水上勉の同名小説。併映は『あかね雲』(1967年)だったので、岩下志麻主演作の2本立て上映。この二本の作品の間にはちょうど10年間の時の流れがある。

瞽女(ごぜ)」というのは、三味線の弾き語りを生業にしていいる盲目の門付け芸人のこと。幼い時に瞽女になったおりん(岩下志麻)は、男と関係をもったことから一座を追われ、はなれ瞽女として漂白の旅を強いられる。ある日、おりんは男(原田芳雄)と出会い、いっしょに旅をする。その男は身寄りのない孤独な身だと言うが、実は脱走兵で実家もあった。二人で奇妙な旅を続けるがついに憲兵に捕まってしまう。


はなれ瞽女おりん(プレビュー)

こうした話だが、「え、また脱走兵の話か。一本目の『あかね雲』と同じじゃないか」と思ったが、10年のキャリアを経て岩下志麻の演技は見違えるように円熟している。盲目の役というのは、漫画「ガラスの仮面」にも出てきたが役者にとって一度は通る道なのであろうか。相手役の原田芳雄は平常運転だが、憲兵の拷問シーンで上半身裸にされて肉体美を見せつけるのはやっぱりなと思わせる。

またなんといっても、この映画の白眉は宮川一夫のカメラによる美しい映像だろう。佐渡ロケなどで撮影された北陸の美しい四季の景色をスクリーンで見ると、ああ映画を見たなという気分になる。

f:id:goldensnail:20160213220218j:plain:w420