少し前の独誌「シュピーゲル」の表紙が「ブリキの太鼓」だったので手に取ってみた。先月死去したドイツの作家であるギュンター・グラス(Günter Grass)の追悼号だ。インパクトのある表紙だ。表紙だけでなく追悼記事がかなりのページを割いて載っていた。すらすら読めるほどドイツ語に堪能ではないが、辞書を片手にパラパラ眺めているだけでもなかなか面白い。
ギュンター・グラスはダンツィヒ自由市(現・ポーランド領)の生まれで、代表作の『ブリキの太鼓』(Die Blechtrommel)もダンツィヒを舞台にしている。地図でダンツィヒの位置を確認すると、こんなところまでドイツ領だったのかとあらてめて驚く。グラスが生まれたときはすでに第一次世界大戦後のヴェルサイユ体制の時代でドイツ領ではなかったが。負け続けたドイツはどんどんと領土を失い小さくなっていく。しかし、ドイツは戦後EUの盟主にまで上り詰めている。時は流れた。
さて小説『ブリキの太鼓』だが、学生時代に読んで挫折した記憶だけがある。なぜ途中で読むのをやめたのかはっきりとは覚えていないが、あまりに寓話的だったし、大部だということもあっただろうか。あれから随分時間が経つが新訳は出ていないようだ。
それでもフォルカー・シュレンドルフ監督による映画は面白かった。叫び声でガラスを割るシーンが再現されていてうれしかった。とにかく主人公の少年が怖かった印象が強い。映画館でもう一度見てみたいものだ。
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さてギュンター・グラスは、2000年代になってナチスの親衛隊に入隊してことを後に告白したことが記憶に新しい。ノーベル賞を返還しろという声が起きるほど騒ぎにもなった。訃報に接してそのあたりのテキストを読み直してみたいが、なかなか時間がない。