いわゆる「大阪都構想」をめぐり、大阪市の橋下徹市長と京都大学の藤井聡教授のバトルが勃発している。藤井教授がネットで配信した〈大阪都構想:知っていてほしい7つの事実〉に対して、橋下市長が過剰に反応したものだ。バトルと言うより一方的にキレたというのが実情のようだ。
大阪のことは大阪の人が決めればいいが、都民としては特別区に興味があったので騒動を追ってみた。なお問題の藤井教授による〈大阪都構想:知っていてほしい7つの事実〉については、下記の記事参照できる。
5月17日に「大阪都構想」を問う住民投票
あまり知られていないが5月17日に「大阪都構想」を問う住民投票が実施される。
しかし、この住民投票で過半数を得て「大阪都構想」が支持されても、「大阪都」になるわけではない。ただ大阪市を廃止して5つの特別区に分割することが決まるだけだ。大阪府のもう一つの政令市である堺市はそのままだし、大阪府と他の市町村との関係もそのままである。
「大阪都構想」と言いながら、大阪都になるわけではないのだから、名称が不適切だろう。この名称を喧伝して住民に事実とちがうイメージを刷り込む戦略だろうか。なにやら「大阪都構想」というネーミングからあやしい。
しかも、この住民投票は一発勝負。過半数を獲得すれば移行期間はあるものの、その場で大阪市の消滅が確定する。住民にとっては重要な決定がなされるわけだが、まだまだ「え、大阪市がなくなるの?」という人も多いようだ。
「大阪都構想:知っていてほしい7つの事実」とは
藤井教授が発信した文書から「7つの事実」を抜き出してみよう。
ざっくり見たところ、ほぼずべてが「事実」であろう。
付言するならば、第6項で東京の区部の人は損をしているとあるが、厳密には特別区の間で「都区財政調整制度」という仕組みがあり財政を調整しているので、自分が住んでいる区が得なのか損なのかは一概には言えない。つまり裕福な特別区は、「世田谷市」「港市」になったほうが得であり、実際、特別区は時代遅れで廃止した方がいいする意見もあるようだ。
大阪市においても、個々の住民の損得を考えるならば、特別区の間でどのように財政調整するのかという議論がされるべきだろう。それでも大阪市全体で考えれば、相対的に裕福な大阪市から、他の市区町村に税金が流出するのはまちがいない。
橋下市長のケンカ殺法
この「7つの事実」は「大阪都構想」の論点整理に有効だと思うので、これをベースに議論を進めればいいと思ったが、橋下市長の反応はまったく違っていた。彼のツイートを見てみよう。
バカな学者の典型です。学長になって初めて大阪都構想の意味が分かるでしょう。 RT @gotchaness: @t_ishin 国土強靭化でお馴染みの藤井聡が大阪市の税収が大阪市外に使われると騒いでいます。大阪市は市外の人達にも支えられてるということが分かってない。
— 橋下徹 (@t_ishin) January 27, 2015
むしろ大阪市民だけで支えていたものを大阪府民全体で支えるのです。この学者、専門外のことに口を出すなと RT @gotchaness: 国土強靭化でお馴染みの藤井聡が大阪市の税収が大阪市外に使われると騒いでいます。大阪市は市外の人達にも支えられてるということが分かってない
— 橋下徹 (@t_ishin) January 27, 2015
さらに記者会見でも「この小チンピラだけは正す」と意気軒昂。なんだかなぁ~。
橋下徹 - (20150205) 藤井氏は一番セコイ学者の典型例。この小チンピラだけは正す ...
まあ、こうした人が市長に選ばれるのが大阪らしいと言うべきか……。
一方、藤井教授は、HP『権力による言論封殺には屈しません』(サトシフジイ ドットコム:http://satoshi-fujii.com/)にて見解を公表している。下記動画も参照してほしい。
【藤井聡「都構想問題」声明文】「権力による言論封殺には屈しません」(H27/2/7 ...
併せて藤井教授の見解については下の「現代ビジネス」の記事も参照してほしい。
まとめ
住民投票まで3か月。それまでに必要な情報を住民が共有することが重要だ。そのためには、論点整理をしながら、ひとつひとつ議論を尽くすことが必要だと思われる。今後の議論の行方は大阪の人たちにかかっている。しかし今回の騒動を目の当たりにした後で、残念ながら多くを期待するのは難しそうだ。