年末にTBSで放送された映画『あしたのジョー』(2011年、監督:曽利文彦)を鑑賞。矢吹丈に山下智久、力石徹 に伊勢谷友介という配役。原作は少年マガジンに連載されていた高森朝雄・ちばてつやによる人気漫画。
本作と同じくコミックの実写作品として曽利監督が撮った『ピンポン』(2002年)はなかなかよかったので、期待したが惨憺たる出来だった。やはり格闘技の実写化はむずかしい。
この作品を見るのは2回目。今回テレビ用に尺を縮めるために編集したせいか、映画オリジナルの欠点はいくらかは改善されている。
まず白木葉子(香里奈)がドヤ街の出身で、少女期の体験からドヤ街を潰して再開発しようとする謎の設定はバッサリとカット。そして力石徹が死んでからダラダラ続く意味不明の場面も短くなっている。最初に見たときは、「ここに尺使うなら別のシーン撮れよ」と思ったものである。
少しはマシになったが、まだまだ全体の構成がおかしい。まあ原作をそのまま取り入れるには尺が短いのだろう。いまならば『るろうに剣心』や『寄生獣』のように前編・後編の構成にするところか。
最もダメなのはリング上のボクシングのシーン。格闘技ほど玄人と素人の差が出るスポーツはないというが本当なのだろう。ピンポンのようにいかない。例を挙げれば山下智久のパンチにはまるで腰が入ってないのがダメ。撮影技術でもごまかしようがない。しかも肝心のシーンになると、スローになって視点が回り出すというワンパターン演出。途中でいい加減にしろい言いたくなる。
ダメな点は多々あるが、もう一つだけ。白木葉子役の香里奈がミスキャストではないか。セリフは棒なのはともかく、どうもイメージが違う。だれが適役かはすぐに言えないが、北川景子あたりのほうがよかっただろう。
最後によかった点も挙げておく。まず丹下段平役の香川照之のなりきりコスプレ、そして減量で苦しむ力石徹を演じた伊勢谷友介のシェイプアップされた肉体美。また泪橋や丹下ジムのセットやドヤ街のCGは素晴らしかったことは付言しておきたい。
興行成績が好調ならば、山Pのジョーは続編でホセ相手に燃え尽きたのだろうが、それも夢のまた夢か。映画の世界はそう甘くないようだ。
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