退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

伝説のボクシング漫画「あしたのジョー」を読みました

昨年秋からAbemaTVで配信されていたテレビアニメ「あしたのジョー」を見て、コミックを読み直してみようと思いたち、年末年始を利用して読了しました。

高森朝雄梶原一騎)とちばてつやにより、1968年から1973年にかけて「少年マガジン」に連載された社会現象にまでなったボクシングをテーマにしたスポーツ漫画です。さすがにリアルタイムで読んでいた世代ではありませんが、いま読み直しても面白いです。いいおっさんの鑑賞に耐える少年漫画はなかなかありません。

大ヒットした漫画なのでいまさら多くを語ることもありませんが、以前読んだときとちがったのは白木葉子という登場人物に対する印象です。

白木葉子は日本有数の富豪である白木財閥の令嬢。美人ではあるが、富士額にロングヘアのオールバックという不思議な外観です。彼女は、この作品のヒロインですが、気が強くプライドが高く鼻持ちならないタイプの女性として描かれています。

力石徹の死後、葉子は白木ジムのちゃっかり会長に収まり、金に飽かせてプロモーターとして矢吹丈をサポートします。そのなかで次第に丈に惹かれていき、ついにホセ・メンドーサの試合前に丈に自分の思いを告白します。

以前読んだときは、いけ好かないヒロインだなと思った記憶がありますが、今回は少しは葉子の気持ちが分かるような気がしました。梶原一騎の作品にありがちな女性像で純愛と言ってもいいかもしれません。現実にはこんな女性はめったにいるものではないでしょうが……。

今回読んだのは少し大判の「豪華愛蔵版」(全16巻)という版ですが、各巻末に梶原一騎ちばてつやのエッセイの抜粋を始め、寺山修司の文章なども載っていて興味深く読みました。ちばてつやがドヤ街に取材に行った話や、酒場で二人でボクシングのシーンを検討している場面をケンカと勘違いされた話などが面白い。なかでも、ちばが力石を大きく描きすぎたために減量苦のエピソードが生まれたという話は意外でした。偶然の産物だったわけです。

あしたのジョー」以降のボクシング漫画は、すべて本作の影響下にあると言っても過言ではありません。未読の若い世代にも一度は読んでみてほしい作品です。

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